・・・笑ったというが、どうして信玄は飯綱どころか、禅宗でも、天台宗でも、一向宗までも呑吐して、諸国への使は一向坊主にさせているところなど、また信玄一流の大きさで、飯綱の法を行ったかどうか知らぬが、甲州八代郡末木村慈眼寺に、同寺から高野へ送った武田・・・ 幸田露伴 「魔法修行者」
・・・その殉死の理由は、それから三十年も昔、主命によって長崎に渡り、南蛮渡来の伽羅の香木を買いに行ったとき、本木を買うか末木を買うかという口論から、本木説を固守した彌五右衛門は相役横田から仕かけられてその男を只一打に討ち果した。彌五右衛門は「某は・・・ 宮本百合子 「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」
・・・然るところその伽羅に本木と末木との二つありて、はるばる仙台より差下され候伊達権中納言殿の役人ぜひとも本木の方を取らんとし、某も同じ本木に望を掛け互にせり合い、次第に値段をつけ上げ候。 その時横田申候は、たとい主命なりとも、香木は無用の翫・・・ 森鴎外 「興津弥五右衛門の遺書」
・・・然るところその伽羅に本木と末木との二つありて、はるばる仙台より差下され候伊達権中納言殿の役人ぜひとも本木の方を取らんとし、某も同じ本木に望を掛け、互にせり合い、次第に値段をつけ上げ候。 その時相役申候は、たとい主命なりとも、香木は無用の・・・ 森鴎外 「興津弥五右衛門の遺書(初稿)」
出典:青空文庫