・・・子供の片言でも、商品の広告文でも、法律の条文でも、幾何学の定理の証明でもそうである。ピタゴラスの定理の証明の出て来る小説もあるのである。 ここで言葉というのは文字どおりの意味での言葉である。絵画彫刻でも音楽舞踊でも皆それぞれの「言葉」を・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・法律の条文を暗記させるように教え込むべきものではなくて、自然の不思議への憧憬を吹き込む事が第一義ではあるまいか。これには教育者自身が常にこの不思議を体験している事が必要である。既得の知識を繰り返して受け売りするだけでは不十分であ・・・ 寺田寅彦 「化け物の進化」
・・・憲法と民法とが条文の上で男女平等といっているその実際の条件をこの社会の中につくり出してゆくことこそ、新しい意味での男女の平等な協力の中心眼目であろうと思う。 民法の改正は明治三十二年頃福沢諭吉が婦人のために力説した議論であった。当時日本・・・ 宮本百合子 「明日をつくる力」
・・・どうせ悪質な出版をする者はその時々の情勢によって猥褻にもなれば怪奇にもなるのであって、もしひっくるめてそれを取締る法律をつくれというのならば、法律の条文としては「公安を保つ」というような文句が使われやすい。ところが、この「公安」という字は、・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・なぜなら、新しい中国の人民社会において、憲章の条文は実現されるものだからです。日本の政権が、こんにち言論を抑圧し、正義をまげて労働者階級を弾圧し、民主的発展を挫折させるために、捏造している幾つかの政治的事件の裁判でのように、人民の基本的人権・・・ 宮本百合子 「宋慶齢への手紙」
・・・についても、民法の条文を引用して、離婚が「女大学」にいわれているような条件で成り立つべきでないことを説明している。益軒の「女大学」は、あらゆるところで、女は夫に仕えて云々という表現をしているのだが、福沢諭吉の開化の心は、主従関係、身分の高下・・・ 宮本百合子 「三つの「女大学」」
出典:青空文庫