・・・全文省略 八唱 憤怒は愛慾の至高の形貌にして、云々「ちょっと旅行していました留守に原稿やら、度々の来信に接して、失礼しました。が、原稿は相当ひどい原稿ですね。あれでは幾らひいき目に見ても使えません。書き直して貰っても・・・ 太宰治 「二十世紀旗手」
・・・ 一月○日 十日に入営する隆ちゃんより来信。点呼のとき青年団員が復唱するような勇壮な調子で入営について書いてあり、又ほのかな思い出を家にのこしてとても優しく書いてあったり。姉上の御全快と御幸福をおいのりいたします。そして最後に「・・・ 宮本百合子 「寒の梅」
・・・そして、今朝、起きるとすぐ食堂へ下りて行って来信のところを見る。無い。これはどういうことであろう? 二週間何も書かれないということは? そう考え、顔を洗いながら私が病気をするような気候故、そちらも大変工合がわるくていらっしゃるのではないだろ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・或は又、父自身が帰って来て、その辺につみ重ねてある不用の来信を整理するとき、例の調子で自分から破って淘汰の仲間入りをさせてしまったこともあったでしょう。 今日、私共にとって纏った記念としてのこっているのは、明治三十七年一月から明治四十年・・・ 宮本百合子 「中條精一郎の「家信抄」まえがきおよび註」
出典:青空文庫