・・・花時上佳 〔花時 上佳し雖レ佳慵レ命レ駕 佳しと雖も駕を命ずるに慵し都人何雑沓 都人何ぞ雑沓して来往無二昼夜一 来往すること昼夜を無するや或連レ袂歌呼 或は袂を連ねて歌呼し或謔浪笑罵 ・・・ 永井荷風 「向嶋」
・・・竜動に巍々たる大廈石室なり、その市街に来往する肥馬軽車なり、公園の壮麗、寺院の宏大、これを作りてこれを維持するその費用の一部分は、遠く野蛮未開の国土より来りしものならん。ただに遠国のみならず、現に両国境を接する日耳曼と仏蘭西との戦争において・・・ 福沢諭吉 「教育の目的」
・・・快を感ずるもまた人生の至情に免かるべからざるところなれば、その心事を推察するに、時としては目下の富貴に安んじて安楽豪奢余念なき折柄、また時としては旧時の惨状を懐うて慙愧の念を催おし、一喜一憂一哀一楽、来往常ならずして身を終るまで円満の安心快・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
出典:青空文庫