・・・その他各戦線にわたって天候のために利を得また損害を受けた実例は枚挙に暇ないほどある。ことに飛行隊の活動などは著しく天気の影響を受けている事は日々の新聞記事に徴しても明らかである。 ドイツ側は勿論、聯合軍側でも気象学者がどれだけ活動してい・・・ 寺田寅彦 「戦争と気象学」
・・・とか一々枚挙に遑はないが、こういう言葉を如何に理解し如何に自然界に適用すべきかという事を実験の途中で漸次に理解させるが肝要であろうと思う。これを誤解すれば、物理学を神の掟のように思って妄信してしまうか、さもなくば反対に物理学の価値を見損なっ・・・ 寺田寅彦 「物理学実験の教授について」
・・・ こういうふうの見方からすると、これと同様な実例ははなはだ多くて枚挙にいとまないくらいである。同じ巻でも「子の日」と「春駒」、「だびら雪」と「摩耶の高根に雲」、「迎いせわしき」と「風呂」、「すさまじき女」と「夕月夜岡の萱根の御廟」、等々・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・云 江戸名家の文にして墨水桜花の美を賞したものは枚挙するに遑がない。しかし京師および吉野山の花よりも優っていると言ったものは恐らく松崎慊堂のみであろう。慊堂は昌平黌の教授で弘化元年に歿した事は識者の知る所。その略伝の如きはここに言わない・・・ 永井荷風 「向嶋」
・・・現代の作物に至ると、この弊を受けたものは枚挙に遑あらざるほどだろうと考える。ヘダ・ガブレルと云う女は何の不足もないのに、人を欺いたり、苦しめたり、馬鹿にしたり、ひどい真似をやる、徹頭徹尾不愉快な女で、この不愉快な女を書いたのは有名なイブセン・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・また、学者が新聞紙を読みて政を談ずるも、急といえば急なれども、なおこれよりも急にしてさらに重大なる事の箇条は枚挙にいとまあらざるべし。 前章にいえる如く、当世の学者は一心一向にその思想を政府の政に凝らし、すでに過剰にして持てあましたる官・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
・・・ 又いきなはりい如何せんかと どをしよをか どをしゆうか どげいしゆうか 商に同じいうことを 又どをしゆうか この外、筆にも記しがたき語風の異同は枚挙に遑あらず。故に隔壁にても人の対話を・・・ 福沢諭吉 「旧藩情」
・・・その際に当たり、何らの箇条を枚挙して進退を決するや。世間よく子を教うるの余暇を得んがためにとて、月給の高き官を辞したる者あるを聞かず。商売の景気を探らんために奔走する者は多けれども、子を育するの良法を求めんためにとて、百里の路を往来し、十円・・・ 福沢諭吉 「教育の事」
・・・これらの例をかぞうれば枚挙にいとまあらず。あまねく人の知るところにして、いずれも皆人生奇異を好みて明識を失うの事実を証するに足るべし。 ゆえに、子女の養育に注意する人は、そのようやく長ずるにしたがって次第に世間の人事にあたらしむるの要用・・・ 福沢諭吉 「経世の学、また講究すべし」
・・・ 然りといえども、以上枚挙するところは十五年来の実際に行われ、今日の法律においてこれを許し、今日の習慣においても大いにこれを咎ること能わざるものなり。徳教の老眼をもってこの有様を見れば、まことに驚くに堪えたり。元禄年間の士人を再生せしめ・・・ 福沢諭吉 「徳育如何」
出典:青空文庫