・・・ このとき、おじいさんはまだ木に命があるかどうかと、まゆをひそめて枝などを折ってしらべていましたが、「この木が助かるものなら、枯らすのはかわいそうです。」と答えました。 おかみさんは、ただ笑って、だまっていましたが、心の中で、き・・・ 小川未明 「おじいさんが捨てたら」
・・・ゆる手品の種明かし、樹皮下に肉桂を注射して立木を枯らす法などもある。 こういう種類の資料は勿論馬琴にもあり近松でさえ無くはないであろうが、ただこれが西鶴の中では如何にもリアルな実感をもって生きて働いている。これは著者が特にそうした知識に・・・ 寺田寅彦 「西鶴と科学」
・・・下手な植木屋が良い木を枯らす。 科学者が利口になると科学は進歩を中止する。科学者はみんな永久に馬鹿でありたい。 六 理学部会委員に約束しておいたのを忘れていて、今日最後の通牒を受けて驚いて大急ぎで書いたの・・・ 寺田寅彦 「スパーク」
・・・話しの種の思う坪に生えたるを、寒き息にて吹き枯らすは口惜し。ギニヴィアはまた口を開く。「後れて行くものは後れて帰る掟か」といい添えて片頬に笑う。女の笑うときは危うい。「後れたるは掟ならぬ恋の掟なるべし」とアーサーも穏かに笑う。アーサ・・・ 夏目漱石 「薤露行」
出典:青空文庫