・・・と云われたことは、社会主義リアリズムへ展開して、もとよりその核心に立つ労働者階級の文学の主導性を意味しているのであるが、前衛の眼の多角性と高度な視力は、英雄的ならざる現実、その矛盾、葛藤の底へまで浸透して、そこに歴史がすすみ人間性がより花開・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・ マークが、スーザンのその心持の核心をついに掴めなかったということは何という悲劇であったろう。自分が彼女にとってなくてはならないものであって、同時に彼女は彼というものだけで満足しきれないものをも持って生きているのだということを、マークは・・・ 宮本百合子 「『この心の誇り』」
・・・あれは未だ纏った考えと云うより、一つの暗示にすぎないから、女性中心思想によって敷衍された結論に猶考える余地があるとしても、その核心である女性のデリケートな自尊心については味うべきものであると思う。所謂進歩し、懐疑なく性生活を支配している新女・・・ 宮本百合子 「是は現実的な感想」
・・・常に事物の本質をわかって行きたいと思う心持こそ、文化の核心の精髄であるとともに、人間の人間たる所以であると思う。 私たちが謙遜な心で今日の生活の諸相を省みたとき、文化の問題が最大の危険としてもっているものは何だろう。 いろいろの点が・・・ 宮本百合子 「今日の生活と文化の問題」
・・・現実生活の中では、文部省の教科書取締りにあらわれた、文学の読みかたの、特殊な標準とも関連しているから、各種目の長篇小説の未曾有の氾濫状態の一面に、おのずと、文学とは何であろうかという、文学にとって最も核心にふれた反省が、一般の人の心のうちに・・・ 宮本百合子 「今日の文学と文学賞」
・・・果して、文学の仕事に従うような核心的なものが自身の精神のうちにあるかどうかについて、若々しく憂悶する美しさもあっていいのではなかろうか。『文芸』の当選作「運・不運」を読み、選評速記を熟読して、深くその感に打たれた。 ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の諸相」
・・・と日本語に表現して身につけて来た生活と思想との核心的ポーズは、そのまま「行動主義」のニイチェ的なるものとしてあらわされている。更にフェルナンデスは、左右両翼のいずれへ作家が思想的立場を決定することも、歴史と思想の現状になんら照応しない観念、・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ 時間の上からは第一篇についで書かれた第二篇は、それらの諸問題と必然なつながりをもっていると云うばかりでなく、この評論集全巻の核心をなす重要な部分ではあるまいかと考える。日本の文芸批評は、十年ほど前に鑑賞批評、印象批評から発展して、漸々・・・ 宮本百合子 「作家に語りかける言葉」
・・・都会の工業生産と断然結合すべき、社会主義的生産に欠くべからざる工業原料生産の核心なのだ。 拍手! 熱心な拍手。もう聴衆は一人も笑っていない。 日本女は心に一種のおどろきを感じつつあたりの顔々を眺めまわした。どうだ、この気の揃いようは・・・ 宮本百合子 「三月八日は女の日だ」
・・・それゆえ、一九三八年ごろフランスでナチスの暴虐にたいして人間の理性をまもるために組織されたヒューマニスティックな人民戦線のたたかいも、日本に紹介される時には、大事な闘争の社会史的な核心をぬいて伝えられた。日本の天皇制は、帝国主義の段階にあっ・・・ 宮本百合子 「自我の足かせ」
出典:青空文庫