-
・・・ 同心一夕紅糸を繋ぐ 大家終に団欒の日あり 名士豈遭遇の時無からん 人は周南詩句の裡に在り 夭桃満面好手姿 丶大名士頭を回せば即ち神仙 卓は飛ぶ関左跡飄然 鞋花笠雪三千里 雨に沐し風に梳る数十年 縦ひ妖魔をして障碍を成さしむ・・・
内田魯庵
「八犬伝談余」
-
・・・五十くらいの田舎女の櫛取り出して頻りに髪梳るをどちらまでと問えば「京まで行くのでがんす。息子が来いと云いますのでなあ」と言葉つき不思議なるを、国はと問えば広島近在のものなる由。飾り気一点なきも樸訥のさま気に入りてさま/″\話しなどするうち京・・・
寺田寅彦
「東上記」