本当に小説の勉強をはじめたのは、二十六の時である。それまでは専ら劇を勉強していた。小説は殆んど見向きもしなかったようである。ドストイエフスキイやジイドや梶井基次郎などを読んだほかには、月月の文芸雑誌にどんな小説が発表されて・・・ 織田作之助 「わが文学修業」
・・・それじゃ、あなたは梶井基次郎などを好きでしょうね。」「このごろ、どうしてだか、いよいよ懐かしくなって来ました。僕は、古いのかも知れませんね。僕は、ちっとも自分の心を誇っていません。誇るどころか、実に、いやらしいものだと恥じています。宿業・・・ 太宰治 「鴎」
・・・ ここに梶井基次郎の「筧の音」という散文詩があった。 問答「妻たち」が真面目な卓れた作品である。そういう話が同座の人々の中で一致した。あとで、或る人が「しかし、あの人の作品は、純粋であろうとして、現在出来上ってい・・・ 宮本百合子 「折たく柴」
・・・小説はそういう心持にアサが辿りつくまでの経緯、腕のいい職工であるが勝気で古い母に圧せられ勝な良人の山岸との心持の交錯、大変物わかりのよい職長梶井のうごきなどを語って展開されているのである。 深い興味をもって読んだが、この長篇の前半と後半・・・ 宮本百合子 「徳永直の「はたらく人々」」
出典:青空文庫