・・・そういう意味においてすべての種類の映画の制作はやはり広義における映画芸術の領域に属するものと思われるから、ここではそういう便宜上の種別を無視して概括的に考えることにする。 映画は芸術と科学との結婚によって生まれた麒麟児である。それで映画・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・たとえ日進月歩の新知識を統括する方則や原理の数はそれほど増さないとしても、これによって概括せらるべき事実の数は次第に増加して来るばかりである。従って勢い物理学の中でもだんだんに専門の数が増加しその範囲が狭くなる。この勢いで進んで行けば物理学・・・ 寺田寅彦 「科学上における権威の価値と弊害」
・・・ 前記の小説家もこんなことぐらいはもちろん承知の上でそれとは少し別の意味でそう云ったには相違ないが、しかし不用意に読み流した読者の中には著者の意味とちがった風に解釈して、それだから概括的に小説は高級なもので随筆は低級なものであるという風・・・ 寺田寅彦 「雑記帳より(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」
・・・それで、もしや、拡散も波動も概括するような一つの大きな体系があって、その両極端の場合が不減衰波動と純粋な拡散とであって、その中間にいろいろなものが可能でありはしないかという空想が起こり得られる。ずっと昔、ケルヴィン卿が水の固定波か何かの問題・・・ 寺田寅彦 「自然界の縞模様」
・・・一方ではまた浅薄な概括的論述を羅列した通俗科学的読み物がはなはだしく読者をあやまるという場合もしばしばあるであろう。それで、ただ一概に断片的な通俗科学はいかなる場合でも排斥すべきものであるかのような感を読者にいだかせるような所説に対しては、・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・ 津田君の絵は今非常な速度で変化し発育しつつあるのだから概括的に論ずるが困難であるのみならず、また具体的に一つ一つの作品に対して批評するのも容易な仕事ではない。しかしともかくも出発点における覚悟と努力の向け方においては自分が本当の南画の・・・ 寺田寅彦 「津田青楓君の画と南画の芸術的価値」
・・・という概括的な歎息がもらされる。出品者に取っておそらくこれほど残念な張合いのない事はあるまいと思う。こういう批評は恐ろしく無責任な冷酷なものとして神経過敏な出品者の不快な反感を買うかもしれない。しかしこの種の批評は必ずしも無責任とは云えない・・・ 寺田寅彦 「帝展を見ざるの記」
・・・たとえばリュート類似の弦楽器として概括さるべきものに、トルコのコプズ、ルーマニアのコブサ、またコブズ、ロシヤ、ハンガリーへんのコボズなどがある。それからシベリアの一地方でコムスというのは、ふくれた胴に皮が張ってあるが、弦は二本で五度に合わす・・・ 寺田寅彦 「日本楽器の名称」
・・・ 以上きわめて概括的に日本の自然の特異性について考察したつもりである。それで次にかくのごとき自然にいだかれた日本人がその環境に応じていかなる生活様式をとって来たかということを考えてみたいと思う。 日本人の日常生活・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・直接五感に触れる万象をことごとく偶然と考えないとすれば、経験が蓄積するにつれて概括抽象が行われ箇々の方則を生じ、これらの方則が蓄積すれば更に一段上層の概括が起る。そうなればもはや人間というものは宇宙の片隅に忘れられてしまって、少数の観念と方・・・ 寺田寅彦 「物質とエネルギー」
出典:青空文庫