・・・ただ少し、構成の投げやりな点が、かれを第二のシェクスピアにさせなかった。とにかく、これから、諸君と一緒に読んでみましょう。 女の決闘 古来例の無い、非常な、この出来事には、左の通りの短い行掛りがある。 ロシヤの医科大学・・・ 太宰治 「女の決闘」
・・・もっとも私は、あの短篇小説に於いて、兄妹五人と、それから優しく賢明な御母堂に就いてだけ書いたばかりで、祖父ならびに祖母の事は、作品構成の都合上、無礼千万にも割愛してしまっているのである。これは、たしかに不当なる処置であった。入江の家を語るの・・・ 太宰治 「ろまん燈籠」
・・・そうして、西洋の芸術理論家は、こういうものの存在を拒絶した城郭にたてこもって、その城郭の中だけに通用する芸術論を構成し祖述し、それが東洋に舶来し、しかも誤訳されたりして宣伝されることもあるであろう。 四十年前の田舎の亀さんはやはりいちば・・・ 寺田寅彦 「生ける人形」
・・・出発点における主題に含まれているものを順次にその構成要素に解きほごして行ってその各部の具体的設計を完成する過程である。 このようにしてできた設計が完成すれば次には、これらの各部分が工人の手によって実物に作り上げられなければならない。すな・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・ どこにもあくどいところやうるさいところがなくて上へ上へと盛り上がって行くような全篇の構成を観賞しつつ享楽することが出来るようである。 二 家なき児 これもなかなか美しい映画であるが、前の「永遠の緑」などとはま・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(5[#「5」はローマ数字、1-13-25])」
・・・この映画の独自な興味は結局太鼓の音と靴音とこれに伴なう兵隊の行列によって象徴された特異なモチーフをもって貫かせた楽曲的構成にあると思われる。そうしてその単純明白なモチーフが非常に多面的立体的に取り扱われているために、同じものの繰り返しが少し・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・その根性が取も直さず活力節約の工夫となって開化なるものの一大原動力を構成するのであります。 かく消極的に活力を節約しようとする奮闘に対して一方ではまた積極的に活力を任意随所に消耗しようという精神がまた開化の一半を組み立てている。その発現・・・ 夏目漱石 「現代日本の開化」
・・・したがっていくら形式を拵えてもそれを構成する物質次第では思いのままの家はできかぬるかも知れないのです。いわんや活きた人間、変化のある人間と云うものは、そう一定不変の型で支配されるはずがない。政をなす人とか、教育をする人とかは無論、総て多くの・・・ 夏目漱石 「中味と形式」
・・・従って文芸院の内容を構成する委員らは、普通文士の格を離れて、突然国家を代表すべき文芸家とならなければならない。しかも自家に固有なる作物と評論と見識との齎した価値によって、国家を代表するのではない。実行上の権力において自己より遥に偉大なる政府・・・ 夏目漱石 「文芸委員は何をするか」
・・・各国家は各自世界的使命を自覚することによって一つの世界史的世界即ち世界的世界を構成せなければならない。これが今日の歴史的課題である。第一次大戦の時から世界は既に此の段階に入ったのである。然るに第一次大戦の終結は、かかる課題の解決を残した。そ・・・ 西田幾多郎 「世界新秩序の原理」
出典:青空文庫