・・・革命博物館には、種々様々の革命的文献の他に帝政時代、政治犯が幽閉されていた城塞牢獄の監房の模型が、当時つかわれた拷問道具、手枷足枷などをつかって出来ている。茶っぽい粗布の獄衣を着せられた活人形がその中で、獣のような抑圧と闘いながら読書してい・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・会社は若い娘の夢をもたせるために、工場の建物を白く塗って、きれいな花壇をつくったり演芸会をしたり、工場の内に女学校の模型のようなものをおいて、お茶や、お花などをやらせている。その若い娘たちの文化水準が、とりも直さず、日本の婦人の文化的水準の・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・傍の台の上に、耕一が製図している家の油土の模型が出来ていた。彼は、「電球見ないでね」と注意して、二百燭をつけ、それを写真に撮った。卒業製作なのであった。 翌日、まさ子は床についたままで、矢張り殆ど食事が摂れなかった。「こ・・・ 宮本百合子 「白い蚊帳」
・・・全く、机の上で想像した作品だし、観念で模型的に演出された芝居だ。舞台から溢れて観客に燃えうつってゆく熱い焔――メイエルホリド自身が最も重大な演劇的要素としている「感情のつかみ」は、完全に失敗した。「南京虫」を観たのは、丁度マヤコフスキー・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・そこではやっぱり大人の劇場と同じに、舞台装置の模型を作っていろいろなものをやっている。外国の翻訳もやり、ロシア作家のものもやる。 それで興味のある点は、いつでもソヴェト全体が、生活の目標として、努力の目標としている点を子供にも理解させて・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
・・・労働者のクラブには衛生陳列室があって、性病とその遺伝の害悪を模型や図解で示し、肺病、癲癇、アルコール中毒等についても若者たちの具体的、日常的要心を喚起している。 竹内茂代女史は、日本女子の体格分類統計をもって医学博士になられた。彼女の博・・・ 宮本百合子 「花のたより」
・・・ブルジョア・インテリゲンツィア作家は、一年来声を大きくして来た文芸復興を内容づけるためのリアリズム検討につれ、プロレタリア作家の或る者は、社会主義的リアリズムに対する或る種の解釈の模型として、バルザックの花車は、急調子に、同時に些か粗忽に、・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・「日本文化の一切の根底は無の単純化から咲き出したもので、地球上の凡ての文化が完成されればこのようになるものだという模型を作っているような社会形態が日本だと思う。」「つまり知性の到達出来る一種の限界まで行っている義理人情の完璧さのためにも早や・・・ 宮本百合子 「「迷いの末は」」
・・・石膏模型、骨の見本、マリアは僅かの間にジュリアンのアトリエで一番技術をもったブレスロオという娘を唯一の競争相手とするところまで突進した。マリアの異常な才能は輝き出した。それにしても、マリアのいそぎよう! 彼女の日記のどの頁にも、芸術の成功に・・・ 宮本百合子 「マリア・バシュキルツェフの日記」
トゥウェルスカヤの大通を左へ入る。かどの中央出版所にはトルキスタン文字の出版広告がはりだされ、午後は、飾窓に通行人がたかって人間と猫の内臓模型をあかず眺める。緑色の円い韃靼帽をかぶった辻待ち橇の馭者が、その人だかりを白髯の・・・ 宮本百合子 「モスクワ印象記」
出典:青空文庫