・・・ プロレタリア的実践力の欠如によって起るさまざまの破綻を、僕というプロレタリア作家は「無力な小説家的詠嘆だというなかれ! 実際僕は悩んだのだ」と、さながら小説家というものの本質は無力なるもので「どんな場合にでも呑気でいかん」ものなのだが・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・ 多くの作家が、これまでの歴史性による社会感覚の欠如から、今日における自分の発展と創造力更新のモメントを逃がしているように、日本の人民は、智慧と判断を否定し、声をおさえる政策のために、明日死ぬかもしれないその夜の家信でさえ、無事奉公して・・・ 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
・・・このことと現代のインテリゲンツィアの社会的・文化的存在の自信の欠乏と見通しの欠如とは切り離せない関係に置かれている。 私は、この文章の中で今日の文学の現実の姿を粗描し、文学以外の専門に従事する人々のためにも今日の文学的討論や作品の健全な・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・最高検では、青少年の反社会的行為が、おとなのえらい人たちの行為にあらわれている社会的良心の麻痺と責任感の欠如をどう反映しているか、については考慮を払っていないようだ。少年法を二十歳まで適用しては、罰が軽くなりすぎるとばかり心配している。・・・ 宮本百合子 「修身」
・・・ 翼賛会の国民生活指導部長喜多氏は、十三日の朝日新聞へ、国民的訓練の欠如、健全な娯楽の指導の必要としてこの事件を観察し、そこに学生の多かったことは特別反省すべきことだと、「昨夜もあすこへ行って学生を呼んで叱りとばしたが今の時代、学生は娯・・・ 宮本百合子 「「健やかさ」とは」
・・・向に導こうとせず、愚な鸚鵡のようにきまり文句を平気で若い女性たちがくりかえしているのをよしとするのであれば、それこそ、日本文化中央連盟がそれに向って勇ましい戦いを宣言している国民文化の模倣性、独創性の欠如そのものの実際的な強化以外の何もので・・・ 宮本百合子 「世界一もいろいろ」
・・・第二の原因は、そういう心もちがつよいのに比べて、過去の日本の市民精神の欠如から個性と社会とのいきさつを、科学的につっこんで把握する能力が育てられていないために、今日、民主主義文学といわれると、それさえも過去に自分を強制した、その強制の一変形・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・についてのみならず、われわれが互に発展するためには、客観的真理をわれわれの目前により明確にあばき出さなければならず、科学性の欠如そのものによってひき起された誤謬を証明するためには、常により正確な科学的方法が発動させられなければならない。・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・た文学性への要求と婦人作家たちの共通性である芸術至上の傾向によるものであるとされ、それは、男の作家がこの二三年の世相の推移につれ、その社会性の積極さの故に陥った混乱に対置して、結局は婦人作家の社会性の欠如の故と否定的に総括されていた。けれど・・・ 宮本百合子 「地の塩文学の塩」
・・・がないから、という片づけかたには、それを掲載するしないにかかわらず、文化発展のための蓄積・文化進歩の一々の過程についての綿密な評価の欠如が感じられる。 第一次欧州大戦後、敗戦したドイツではフライブルグ大学教授ヴィットコップによって「戦没・・・ 宮本百合子 「「どう考えるか」に就て」
出典:青空文庫