・・・とにかく、みんなは、たがいに欲深であったり、嫉妬しあったり、争い合ったりする生活に愛想をつかしました。そして、これがほんとうの人生であるとは、どうしても真に信じられなかったのであります。・・・ 小川未明 「明るき世界へ」
・・・ しかし、この男は、なかなか欲深でありました。五、六年もたって、ふと、いつか自分は無花果の木を友だちのもとにあずけておいたことを思い出しました。さっそく取りにゆきました。「あなたが、きっと取りにおいでなさると思って、大事に育てておき・・・ 小川未明 「ある男と無花果」
・・・曾ては金持や、資本家というものを仮借なく敵視した時代もあったが、これ等の欲深者も死ぬ時には枕許に山程の財宝を積みながら、身には僅かに一枚の経帷衣をつけて行くに過ぎざるのを考えると、おかしくなるばかりでなく、こうした貯蓄者があればこそ地上の富・・・ 小川未明 「春風遍し」
・・・わたしたちの一票は、おとぎばなしの欲深爺の背負ったつづらのふたをあける役にだけたったようでさえある。まさかとおもい、どうやらこれならとおもって一票を入れた社会党、民主党、民自党、びっくりばこのようにそのふたがはねあがったら昭和電工、相つぐ涜・・・ 宮本百合子 「新しい潮」
出典:青空文庫