・・・ これは貞永式目に出家の死罪を禁じてあるので、表は流罪として、実は竜ノ口で斬ろうという計画であった。 日蓮はこの危急に際しても自若としていた。彼の法華経のための殉教の気魄は最高潮に達していた。「幸なる哉、法華経のために身を捨てん・・・ 倉田百三 「学生と先哲」
・・・ ちらと眼をくれ、『このような、死罪を言い渡されるような、理由は、ない。そこ退け、下賤の者。』応えは無かった。 理由は、おまえに覚えがある筈、そう言ってカリギュラ王は、戸口に姿を現わした。今朝おまえは、ドミチウスめを抱いて庭園を散歩・・・ 太宰治 「古典風」
・・・三斎公その時死罪を顧みずして帰参候は殊勝なりと仰せられ候て、助命遊ばされ候。伝兵衛はこの恩義を思候て、切腹いたし候。介錯は磯田十郎に候。久野は丹後の国において幽斎公に召し出され、田辺御籠城の時功ありて、新知百五十石賜わり候者に候。矢野又三郎・・・ 森鴎外 「興津弥五右衛門の遺書」
・・・そこで太郎兵衛が入牢してとうとう死罪に行なわれることになったのである。 ―――――――――――――――― 平野町のおばあ様が来て、恐ろしい話をするのを姉娘のいちが立ち聞きをした晩の事である。桂屋の女房はいつも繰り言を言・・・ 森鴎外 「最後の一句」
出典:青空文庫