・・・そうして、この、いじけた、流行しない悪作家に同情を寄せ、「文学の敵、と言ったら大袈裟だが、最近の文学に就いて、それを毒すると思われるもの、まあ、そういったようなもの」を書いてみなさいと言って来たのである。 編輯者の同情に報いる為にも私は・・・ 太宰治 「鬱屈禍」
・・・、というふうにあつかったことは、直接そういう目にあうものを極度に苦しめたばかりでなく、ある距離をもってそのぐるりをかこみ、その光景を目撃している、より多数の、より不安定な条件におかれているものの精神を毒することはおびただしかった。文学の領域・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・或は「精力が伝染するように無気力も伝染するもので、この太古のままに生きている人々の魂から、彼の活動的精神を毒するなにか鈍い毒気のようなものが、機械についた錆のように発散されるのだ」そして、「少しずつ彼を吸いとって弱めてゆく微妙なあるもの」は・・・ 宮本百合子 「「揚子江」」
・・・世界平和大会が「世論を毒する宣伝を無力なものにするために、真理と理性の防衛のために広汎な戦線をうちたてる」ことが必要であることを、宣言しているのは実に実際的だと思います。 とくに、日本の平和のために適切です。捏造記事である大本営発表に追・・・ 宮本百合子 「わたしたちには選ぶ権利がある」
・・・安価な楽天主義は人生を毒する。魂の饑餓と欲求とは聖い光を下界に取りおろさないではやまない。人生の偉大と豊饒とは畢竟心貧しき者の上に恵まれるでしょう。悩める者、貧しき者は福なるかな。私は自分の貧しさに嘆く人々が一日も早く精神の王国の内に、偉大・・・ 和辻哲郎 「ある思想家の手紙」
出典:青空文庫