・・・それで木が高いほどうつ向きに落ちた花よりも仰向きに落ちた花の数の比率が大きいという結果になるのである。しかし低い木だとうつ向きに枝を離れた花は空中で回転する間がないのでそのままにうつ向きに落ちつくのが通例である。この空中反転作用は花冠の特有・・・ 寺田寅彦 「思い出草」
・・・これは物理学的ないろいろな量の相互の関係を決定する数式であるが、それがそれらの量自身の間の関係を示すだけでなく、一つの量が少し変わったときに他の量がそれにつれて少し変わる、その変化の比率を示すところのいわゆる微分係数によって書き現わされた関・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・多数の研究者のうちで、何かしら一つの仕事に成功して学位を得る人の数が研究者全体の数に対する統計的比率を不変と仮定しても、研究者の総数がN倍になれば博士の数もN倍になる。のみならず、競争が劇しくなるために研究者の努力が劇しくなればこの比率も増・・・ 寺田寅彦 「学位について」
・・・これに反して遠方から見る場合にはもはやふり仰いで見る心持はなくなって、眼とほぼ同水平面にある視角の小さな物体を見ることになるので、それで上下と左右の比率が正しく認識されるのではないかというのである。この解釈は間違っているかもしれないが、しか・・・ 寺田寅彦 「観点と距離」
・・・そうして多くの草の全体重と花だけの総体重との比率にはおおよそ最高最低限度がありそうな気がしてこれも何かわれわれのまだ知らない科学的な方則で規定されているのではないかという気がするのである。 七月十九日には上田の町を見物に行った。折からこ・・・ 寺田寅彦 「高原」
・・・それは「歌人で気違いになったり自殺したりする人の数と、俳人で同様なことになる人の数とを比較してみたら、ことによると前者のほうが比率の上で多いということになりはしないか」というのである。これは完全な資料によって統計的に調べてみなければなんとも・・・ 寺田寅彦 「俳諧瑣談」
・・・たとえばつい近ごろアメリカで、巻き煙草の吸いがらから火事の卵のできる比率条件について実験的研究を行なった結果の報告が発表されていた。しかしその結果が気候を異にする日本にどこまで適用されうるかについてはだれも知らない。またたとえばガソリンが地・・・ 寺田寅彦 「函館の大火について」
・・・それが、大正昭和と俳句隆盛時代の経過するうちに、栄養に富んだ食物も増し料理法も進歩したことはたしかであるが同時にビタミンの含有比率が減って来て、缶詰料理やいかもの喰いの趣味も発達し、その結果敗血症の流行を来したと云ったような傾向がないとも限・・・ 寺田寅彦 「明治三十二年頃」
・・・今日日本の人々は七千万といわれるうちに、婦人の人口比率は三百万多くなっている。戦争によって未亡人になった婦人はいたるところにいる。この婦人たちの生活こそ、男女の新しい意味での社会的な協力ということについて深刻な問題を提出していると思う。社会・・・ 宮本百合子 「明日をつくる力」
・・・ アメリカ本国の人口比率では婦人が四十六万人少い。労働人口の二八パーセントを婦人が占めて、五百種類以上の職業分野に活動している。家庭の主婦たちにしても、いろいろな婦人団体やクラブの仕事をしている人の率が多い。世界民主主義婦人連盟、反ファ・・・ 宮本百合子 「新しい潮」
出典:青空文庫