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・・・ 氏子は呆れもしない顔して、これは買いもせず、貰いもしないで、隣の木の実に小遣を出して、枝を蔓を提げるのを、じろじろと流眄して、世に伯楽なし矣、とソレ青天井を向いて、えへらえへらと嘲笑う…… その笑が、日南に居て、蜘蛛の巣の影になる・・・
泉鏡花
「茸の舞姫」
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・・・ いわんや、銑吉のごとき、お月掛なみの氏子をや。 その志を、あわれむ男が、いくらか思を通わせてやろうという気で。……「小県の惚れ方は大変だよ。」「…………」「嬉しいだろう。」「ええ。」 目で、ツンと澄まして、うけ・・・
泉鏡花
「燈明之巻」