・・・一千年来の氏族政治を廃して、藤氏の長者に取って代って陪臣内閣を樹立したのは、無爵の原敬が野人内閣を組織したよりもヨリ以上世間の眼をらしたもんで、この新鋭の元気で一足飛びに欧米の新文明を極東日本の蓬莱仙洲に出現しようと計画したその第一着手に、・・・ 内田魯庵 「四十年前」
・・・共同体の基本は父母であり、氏族であり、血と土地と言語と風習と防敵とを共同にするところの、具体的単位がすなわちくになのである。共生ということの意味を生活体験的に考えるならば、必ず父母を基として、国土に及ばねばならぬ。そしてわれわれに文化伝統を・・・ 倉田百三 「学生と先哲」
・・・天照大神の物語は日本の古代社会には女酋長があったという事実を示しているとともに、その氏族の共同社会での女酋長の仕事の一つとして彼女は織りものをしたということが語られている。天照という女酋長が、出来上ることをたのしみにして織っていた機の上に弟・・・ 宮本百合子 「衣服と婦人の生活」
・・・日本の石器時代の氏族社会は、まだ総ての生産手段とその収穫とを共有していた時代で、氏族の中では男も女も平等の権利を持っていた。つまり男も女も等しい選挙権と被選挙権とを持っていたし、女の酋長というものも、文献の中に多勢現われている。この時代は母・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫