・・・「四十二の一白水星。気の多いとしまわりで弱ります。」 僕はころげるようにして青扇の家から出て、夢中で家路をいそいだものだ。けれど少しずつ落ちつくにつれて、なんだか莫迦をみたというような気がだんだんと起って来たのである。また一杯くわされた・・・ 太宰治 「彼は昔の彼ならず」
・・・一白水星、旅行見合せ、とある。」「一本三銭の Camel をくゆらす。すこし豪華な、ありがたい気持になる。自分が可愛くなる。」「女中がそっとはいって来て、お床は? ということになる。」「はね起きて、二つだよ、と快活に答える。ふと・・・ 太宰治 「雌に就いて」
・・・それで重力の秘密は自明的に解釈されると同時に古い力学の暗礁であった水星運動の不思議は無理なしに説明され、光と重力の関係に対する驚くべき予言は的中した。もう一つの予言はどうなるか分らないが、ともかくも今まで片側だけしか見る事の出来なかった世界・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
出典:青空文庫