・・・これについては特に母となる人達の理化学的知識に対する理解と興味の水準をもう少し引上げることが肝要であろうと思われる。科学に対する興味を養成するには、六かしくて嘘だらけの通俗科学書や浅薄で中味のないいわゆる科学雑誌などを読んでもたいして効能は・・・ 寺田寅彦 「家庭の人へ」
・・・昔の絵かきは自然や人間の天然の姿を洞察することにおいて常人の水準以上に卓越することを理想としていたらしく見える。そうして得た洞察の成果を最も卑近な最もわかりやすい方法によって表現したように思われる。しかるにこのごろの多数の新進画家は、もう天・・・ 寺田寅彦 「からすうりの花と蛾」
・・・昔の絵描きは自然や人間の天然の姿を洞察することにおいて常人の水準以上に卓越することを理想としていたらしく見える。そうして得た洞察の成果を最も卑近な最も分りやすい方法によって表現したように思われる。然るにこの頃の多数の新進画家は、もう天然など・・・ 寺田寅彦 「烏瓜の花と蛾」
・・・勿論これらはほんの素人の慰み半分の小型映画作品であったのでこういう厳重な批評をするのは無理であろうが、これでもおおよその水準を窺うことは出来るであろうと思われる。 元来教育映画は骨の折れる割合に商品価値の低いものである以上、現在日本の映・・・ 寺田寅彦 「教育映画について」
・・・ 一合目の鳥居の近くに一等水準点がある。深さ一メートルの四角なコンクリートの柱の頂上のまん中に径一寸ぐらいの金属の鋲を埋め込んで、そのだいじな頭が摩滅したりつぶれたりしないように保護するために金属の円筒でその周囲を囲んである。その中に雨・・・ 寺田寅彦 「小浅間」
・・・それからまたその週期的な波の「平均水準」が人々によって色々違うのみならず、同一個人でも健康状態によりまた年齢により色々ちがうものとする。さらにまたその平均水準の上下に昇降する週期的変化の「振幅」がやはり人によって色々の差があり、ある人は春秋・・・ 寺田寅彦 「五月の唯物観」
・・・それで、人間の頭脳の最高水準を次第に引き下げて、賢い人間やえらい人間をなくしてしまって、四海兄弟みんな凡庸な人間ばかりになったというユートピアを夢みる人たちには徹底的な災難防止が何よりの急務であろう。ただそれに対して一つの心配することは、最・・・ 寺田寅彦 「災難雑考」
・・・ この作品が、日本の今日の映画製作の水準において高いものであることは誰しも異議ないところであろうと思う。一般に好評であるのは当然である。けれども、この次の作品に期待される発展のために希望するところが全くない訳ではない。 溝口健二は、・・・ 宮本百合子 「「愛怨峡」における映画的表現の問題」
・・・ きょう本を買うにしても、その判断を示す一冊の本の買いかたに私たちの今日もっている文化の水準も傾向もおのずからあらわれているわけです。 一、ところが、面白いことに、そうして自分たちの文化の水準をまざまざ示して一冊の本でも買う方に、「・・・ 宮本百合子 「朝の話」
・・・日本においては、繊維産業に働く女の子の生活と意識の水準がどの辺にあるかということが、必ずみられなければなりません。吉田首相がどんなに綺麗な白足袋をはいているかということではなくて、続々と失業させられている労働者の食べられるもの、着ていられる・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
出典:青空文庫