・・・工場としたやりかたで生産工程の組織では全国的にフォード化し分業化しつつ、しかも、村を決してその工業を専門とする工村にはせず、飽くまで副業にとどめて、古来のままの農業精神を主とし、農村全体としての文化の水準などはあるがままの上に農魂商才で行こ・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・ですから、昨今は、日本の看護婦の能力の水準を国際的な高さにまでひき上げるための規則もやかましくなったわけでしょう。 日本の看護婦が欧米の看護婦たちのようによく訓練されていず、しっかりしていないと、ひとくちに云っては、日本の現実を理解しな・・・ 宮本百合子 「生きるための協力者」
・・・市川房枝女史も、今の日本に三十九名もの婦人代議士の出たことはよろこぶべきよりも、寧ろ一般有権者の政治的水準の低さという点で反省、警戒されなければならないことと注意した。それにつれて、婦人参政の先輩諸国の経験が示された。一九一八年に婦人参政権・・・ 宮本百合子 「一票の教訓」
・・・近頃、女優劇と云えば、既に或る程度の水準が定められ、喧しくがみがみ云わない代りに多くも期待しないという状態にあるのを、自分は飽足らなく思う。そうさせて置く方もして置く方も、淋しい。どうぞ、もう一息のところぐっと深くなって、真個に私共の要求す・・・ 宮本百合子 「印象」
近代企業としての映画は、経営の上にも技術の上にも急速な発達をとげているのだが、映画に扱われている女の生活というものは一様にある水準に止まっている。技術的にはアメリカやフランスの映画が先へ歩いて行っている部分のあることは明か・・・ 宮本百合子 「映画の恋愛」
・・・等によって大衆文学の領域に進み出し、テーマの常識性、合理性の日本らしく低められた水準、要素そのものによって成功をかち得て今日に到っている現実に雄弁に語りつくされていると思われるのである。 菊池寛は「義民甚兵衛」の生と死とを、あくまで人間・・・ 宮本百合子 「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」
・・・の提唱がされている一方に、同じ作家たちによって文学の大衆化のことが盛んに語られ、今日の読者大衆の文化的な水準というものはひどく低いのであるから、作家はそれを念頭において書くものをやさしく書かねばいかん、変に凝った、分りにくいスタイルでやっと・・・ 宮本百合子 「「大人の文学」論の現実性」
・・・純文学の仕事をする作家が新聞小説をもかくことで、新聞小説の在来の文学的制約をたち切り、その質を高める方向へ作用することは至難であって、今までのところ、いつしか純文学の水準をそちらの方へ適応させて行っているのではないだろうか。 この事実の・・・ 宮本百合子 「おのずから低きに」
・・・間にたって利益を吸いとる者のない生産のための生産をやっているのだから、根本は一般勤労者の生活水準を高めるのが目的だ。産業別の生産組合は、或る一つの企業をやるとき、必ず天から勤労者福祉資金何割というものを予算に加えて仕事をはじめる。 五箇・・・ 宮本百合子 「「鎌と鎚」工場の文学研究会」
・・・これを奇行と呼び偏屈と嘲るのは、世間の道義的水準の低さを思わせるばかりで、世間の名誉にはならない。 先生の博士問題のごときも、これを「奇を衒う」として非難するのは、あまりに自己の卑しい心事をもって他を忖度し過ぎると思う。先生は博士制度が・・・ 和辻哲郎 「夏目先生の追憶」
出典:青空文庫