・・・彼ら当局者は無神無霊魂の信者で、無神無霊魂を標榜した幸徳らこそ真の永生の信者である。しかし当局者も全く無霊魂を信じきれぬと見える、彼らも幽霊が恐いと見える、死後の干渉を見ればわかる。恐いはずである。幸徳らは死ぬるどころか活溌溌地に生きている・・・ 徳冨蘆花 「謀叛論(草稿)」
・・・パウロはますます熱して永生の存在を立証する彼自身の体験について語り始める。物見高いアテネ人は――「ただ新しきことを告げあるいは聞くことにのみその日を送れる」アテネ人は、また一つの新しい神が輸入せられそうになったことに非常な興味を起こして、ア・・・ 和辻哲郎 「『偶像再興』序言」
・・・しかしたぶん自分は永生きするだろう。」こういう思いが私から死に対する痛切な感じを奪っている。あたかも「死」という運命が自分の上にはかかっていないかのように。結局私は「死」に対して何の準備も覚悟もできていない。「死」をほんとうにまじめに考える・・・ 和辻哲郎 「停車場で感じたこと」
出典:青空文庫