・・・成立って、家庭を統一し進んで社会を支配することも出来たのである、娯楽本能主義で礼儀の精神がなければ必ず散漫に流れて日常の作法とはならぬ、是に反し礼儀を本能とした娯楽の趣味が少ければ、必ず人を飽かしめて永続せぬ、礼儀と娯楽と調和宜しきを得る処・・・ 伊藤左千夫 「茶の湯の手帳」
・・・ 私達は、はじめて地から産れた時の喜びと愛と美とを永続し得れば、其れでいゝのです。しかるに私達は、其の喜びも愛も、幸福も永久に忘れてしまった。私達は、其の幸福を取り返さなければならない。其の正義であった生活をもう一度地上に営んで見なけれ・・・ 小川未明 「草木の暗示から」
・・・ 然しながら現文壇の斯うした安易なだらけ切った状態はそう何時までも永続し得るものではない。何人もが世界平等の苦痛を共に嘗め、共に味わなくてはならないように、各人の生活内容が変ってきた時、其処から初めて新しい感激が湧き、本当の愛が生れてく・・・ 小川未明 「囚われたる現文壇」
・・・行為の価値は永続する、そして不快を結果せぬ快楽、すなわち幸福を生ずるところにあり、社会の幸福をもたらす行為が善である。ロックも、ヒュームも、ミルも幸福主義である。利己的であれ、利他的であれ、個人であれ、社会であれ、ともかくも道徳の目的を福利・・・ 倉田百三 「学生と教養」
・・・アトラスの忍耐、プロメテの忍苦、そのようなかなり永続的な姿であらわされる徳のように思われる。しかも前記三氏の場合、その三偉人はおのおの、その時、奇妙に高い優越感を抱いていたらしい節がほの見えて、あれでは茶坊主でも、馬子でも、ぶん殴りたくなる・・・ 太宰治 「親友交歓」
・・・ただ冷静で気永く粘り強い学者のために将来役に立つような資料を永続的系統的に供給することの出来るような、しかも政治界や経済界の動乱とは無関係に観測研究を永続させ得るような機関を設置することが大切であろう。 颱風が日本の国土に及ぼす影響・・・ 寺田寅彦 「颱風雑俎」
・・・ところが、国は永続しても政府の役人は百年の後には必ず入れ代わっている。役人が代わる間には法令も時々は代わる恐れがある。その法令が、無事な一万何千日間の生活に甚だ不便なものである場合は猶更そうである。政党内閣などというものの世の中だと猶更そう・・・ 寺田寅彦 「津浪と人間」
・・・――それで、もしその時にその米国帰りの人が採用されずに、この私がまぐれ当りに学習院の教師になって、しかも今日まで永続していたなら、こうした鄭重なお招きを受けて、高い所からあなたがたにお話をする機会もついに来なかったかも知れますまい。それをこ・・・ 夏目漱石 「私の個人主義」
・・・また、区内の戸毎に命じて、半年に金一歩を出ださしめ、貸金の利足に合して永続の費に供せり。ただし半年一歩の出金は、その家に子ある者も子なき者も一様に出ださしむる法なり。金銀の出納は毎区の年寄にてこれを司り、その総括をなす者は総年寄にて、一切官・・・ 福沢諭吉 「京都学校の記」
・・・――最も深い意味で、最も永続的な意味で、最も責任のある意味で協力が必要とされてきている時期に……。 協力ということの幅は非常に広いと思う。深さも深い、それはとりもなおさずわたしたちが女として生きる一生の歴史そのものではないだろうか。ほん・・・ 宮本百合子 「明日をつくる力」
出典:青空文庫