・・・サアこれからだ、所謂る額に汗するのはこれからだというんで直に着手したねエ。尤も僕と最初から理想を一にしている友人、今は矢張僕と同じ会社へ出ているがね、それと二人で開墾事業に取掛ったのだ、そら、竹内君知っておるだろう梶原信太郎のことサ……」・・・ 国木田独歩 「牛肉と馬鈴薯」
・・・私は額に汗する思いで、末子を迎えた。「二人育てるも、三人育てるも、世話する身には同じことだ。」 と、私も考え直した。長いこと親戚のほうに預けてあった娘が学齢に達するほど成人して、また親のふところに帰って来たということは、私に取っての・・・ 島崎藤村 「嵐」
・・・『双葉』という少女雑誌で僕の皿絵という小説がおめにふれたとすればと汗するおもいがしました。という人にあって聞きました。トラホームだの頸腺腫だのX彎曲だの、というくだりは、あなたに、いい、といわれたばかりに、どこへでも持って歩いていたのです。・・・ 太宰治 「虚構の春」
出典:青空文庫