・・・ プロレタリア文学者が、ものを否定的にばかりいいたがるということが、小林秀雄、河上徹太郎氏その他の同傾向の人々からいわれたし、今も、これからもいわれるであろうと思う。一般の読者の中には、現実生活の重苦しさにげんなりした心持をプロレタリア・・・ 宮本百合子 「プロ文学の中間報告」
・・・ごく大ざっぱに見て、小林秀雄、林房雄、河上徹太郎、横光利一、室生犀星氏等のように、今日あるままの分裂の形に於て、作家の側からより文化水準の低い民衆を眺め、官吏、軍人、実業家中の精鋭なる人士が情熱を示している刻下の中心問題を文学の中心課題とし・・・ 宮本百合子 「文学の大衆化論について」
・・・白い手袋をはめさせられた女の子が椅子の上で日曜着の膝に落ちた煤煙をふき払った。河上は風がある。ウェストミンスタア橋に近づくと、河の水からやっと這い上ったばかりの猫が一匹コンクリートの河岸のでっぱりの上で盛に上を見ながら鳴き立てていた。河岸ま・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
・・・ 私小説はそれを克服して後始めて本格小説となるという河上徹太郎、小林秀雄両氏などの説も今の作家にとっては何よりの警告であったと思うが、そのようになるための方法としてでも私は制作をするということが本業ではなく副業であると見る見方をとらねば・・・ 横光利一 「作家の生活」
出典:青空文庫