・・・その過程で非常に注目すべきことがあった。エログロ出版物を駆逐するために、警察力を使えということ、新しい取締法律をつくれという意見が伝えられました。しかし、猥褻罪を取締るためには、そのための法律がある。どうせ悪質な出版をする者はその時々の情勢・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・従って、その固定観念への闘争は十八世紀ぐらいから絶えず心ある男女によって行われてきているということは注目すべきことだと思う。それらの運動は単純に家長的な立場から見られている女らしさの定義に反対するというだけではなくて、本当の女の心情の発育、・・・ 宮本百合子 「新しい船出」
・・・ 私は、こうした着眼点を知って、徳田さんの人間的感覚に改めて注目した。徳田さんの意味する愛情は、女対男の限られた範囲のものではなく、女の生活全面に配られるべき人間らしい思いやり、方策、現実的な援助としての愛情を、日本の婦人は実に貧寒にし・・・ 宮本百合子 「熱き茶色」
・・・これも注目されていい。かつて保護観察所長をしていた思想検事の長谷川劉が、現在最高裁判所のメムバーであって、さきごろ、柔道家であり、漫談家、作家である石黒敬七、富田常雄などと会談して、ペン・ワン・クラブというものをつくることを提案している。名・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・今後の小池富美子の成長の道については、階級的婦人、人民的な作家として注目すべきものがある。アナーキスト出身で著名な婦人作家で、その才能の素質と妻としておかれている偽瞞的な環境のためにアナーキズムから社会観を本質的に高められることができず、労・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十五巻)」
・・・この態度はともかく日本の文学的大家としてなかなか注目に価する。ごねかたが本質においてばくちうちの親分と同じである。形式並に仁義の問題にかかっている。文学の本質の問題ではない。どうせ老仙国へ旅行するなら、幸田露伴のように飄々として居ればよい。・・・ 宮本百合子 「雨の小やみ」
・・・現代に題材を取っても、できるだけ詩的な、現代離れのしたものを選みたがる日本画家の中にあっては、確かに注目に価することに相違ない。第四に構図と色彩とが成功である。左右から内側へ曲げられた女の姿勢と、窓や羽目板の垂直の線と、浴槽の水平線と、――・・・ 和辻哲郎 「院展遠望」
・・・この時代として特に注目せらるべき点は、武家の権力政治が数世紀にわたって行なわれた後に、なおこのような王朝時代の政治理想が依然として説かれている点である。これは最初に言及したルネッサンスとしての意義にも関係しているであろう。同じ兼良が将軍義尚・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・ 埴輪人形の稚拙さについて第二に注目すべき点は、この造形が必ずしも人体を写実的に現わそうなどと目ざしていないという点である。それは埴輪の円筒形に「意味ある形」をくっつけただけであって、埴輪本来の円筒形を人体に改造しようとしたのではない。・・・ 和辻哲郎 「人物埴輪の眼」
・・・とを区別したことは、君の作画の態度と照合して注目に価する。一般に意味せられている写実とは、「事実」を写すのである。しかし芸術の名に価する写実は「真実」を写したものでなくてはならない。そうしてこの「真実」は写す人の心の内にある。同じ自然を写し・・・ 和辻哲郎 「『劉生画集及芸術観』について」
出典:青空文庫