・・・抑も子宮の字は洋語の Uterusに当り、相互直訳の文字にして、西洋諸国に於ては医師社会に限りて之を用い、診察治療の必要に迫れば極内々に患者又は其家人に之を告ぐるのみ。医事に関する要談の外に、西洋国人の口よりユーテルスの語を聞かんと欲するも・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・これを君子の身の位という。洋語にいうヂグニチーなるもの、これなり。そもそも人の私徳を脩むる者は、何故に自信自重の気象を生じて、自ら天下の高所に居るやと尋ぬるに、能く難きを忍んで他人の能くせざる所を能くするが故なり。例えば読書生が徹夜勉強すれ・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・という洋語も知らず、また当時の辞書には献身という訳語もなかったので、人間の精神に、老若男女の別なく、罪人太郎兵衛の娘に現われたような作用があることを、知らなかったのは無理もない。しかし献身のうちに潜む反抗の鋒は、いちとことばを交えた佐佐のみ・・・ 森鴎外 「最後の一句」
出典:青空文庫