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・・・「憐みのおん母、おん身におん礼をなし奉る。流人となれるえわの子供、おん身に叫びをなし奉る。あわれこの涙の谷に、柔軟のおん眼をめぐらさせ給え。あんめい。」 するとある年のなたら(降誕祭の夜、悪魔は何人かの役人と一しょに、突然孫七の家へ・・・
芥川竜之介
「おぎん」
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・・・が、御話しになった所では、この島の土人も鬼のように、情を知らぬ事かと存じましたが、――」「なるほど、都にいるものには、そう思われるに相違あるまい。が、流人とは云うものの、おれたちは皆都人じゃ。辺土の民はいつの世にも、都人と見れば頭を下げ・・・
芥川竜之介
「俊寛」