・・・――そのハリコフ会議の日本プロレタリア文学運動についての決議は、農民文学に関して「国内に大きな農民層を持つ日本にあっては、農民文学に対するプロレタリアートの影響を深化する運動が一層注意される必要がある。日本プロレタリア作家同盟の内部に農民文・・・ 黒島伝治 「農民文学の問題」
・・・ 自分は、愛の深化ということは、最も箇性的な、各自の本質的なものだと思わずにはいられません。 従って、既成の倫理学の概念や習俗の力は、いざという時、どれ程の力を持っているのかは疑います。これ等はただ、その人の内奥にある人格的な天質が・・・ 宮本百合子 「偶感一語」
・・・後者への見とおしが、何かの意味でその中枢神経を貫いていなければ、結局はヒューマニズムそのものが生彩ある発動、深化、推進力を麻痺させられてしまうというような、質的な関係につながれているのではないだろうか。 困難な新進の道・・・ 宮本百合子 「十月の文芸時評」
・・・ 当時文学が新しい素材の源泉とリアリズムの深化の契機を報告文学に求めようとしたことと、そこに見出された不満との関係は、その数年来文学が転々して来た動向から見て必然な結果のあらわれであったといえよう。報告文学がそのものとして独自の人間記録・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・既に、左様な組織が存在すると仮定すれば、目下種々な事情から生活方針の選択に迷っている者は少くとも最後の判断は自分の心によってなされるのだと云う責任感も与えられ、当然、考察の深化と視野の拡大は予期されます。又、これから人生の始ろうとする者は、・・・ 宮本百合子 「ひしがれた女性と語る」
・・・ プロレタリア文学は、当然、内国的主題をいよいよ具体的に国際的なプロレタリア・農民解放運動全般との結びつきにおいて深化させて行くとともに、一方、次第にこの「転換時代」に類する作品、又は、紹介的役割をもつ「ズラかった信吉」の更に数段成功的・・・ 宮本百合子 「プロレタリア文学における国際的主題について」
・・・然し、共通の利害で密集した大衆の力が現実に高まって、従って主題がある程度まで深化されたモメントというものはあるわけだろう。 われわれは、こまかい具体的情景を書いて行かなければならない。だが、ただ職場でこういった、こんなことがあったと、現・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・ 日本代表の有島氏は、ヴェノスアイレスの第十四回大会へ島崎藤村氏と共に出席したのだから、恐らくこの一年の間に世界の空気がどのように動き、対立する気流はどのように深化したかを、些かは身に添えて感じていられるであろう。日本における外国文学翻・・・ 宮本百合子 「ペンクラブのパリ大会」
・・・彼らの根本的な欠点を救うものは、ただ自己の深化のほかにあり得ない。それによって彼らはその「眼」を鋭くし、その経験の「質」を変化することができるだろう。そうして初めてほんとうに自然に面することもできるだろう。五 自然をただ醜悪・・・ 和辻哲郎 「「自然」を深めよ」
出典:青空文庫