・・・ 感心にうまい酒を飲ませます。混成酒ばかり飲みます、この不愉快な東京にいなければならぬ不幸な運命のおたがいに取りては、ホールほどうれしい所はないのである。 男爵加藤が、いつもどなる、なんと言うてどなる「モー一本」と言うてどなる。・・・ 国木田独歩 「号外」
・・・あの工場からアセトンだと云って樽詰めにして出したのはみんな立派な混成酒でさあ。悪いのには木精もまぜたんです。その密造なら二年もやっていたんです。」「じゃポラーノの広場で使ったのもそれか。」「そうですとも。いや何と云っても大将はずるい・・・ 宮沢賢治 「ポラーノの広場」
・・・その沢山の物売りが独特な発声法で、ハムやコーヒー牛乳という混成物を売り廻る後に立って、赤帽は、晴やかな太陽に赤い帽子を燦めかせたまま、まるで列車の発着に関係ない見物人の一人のように、狭い窓から行われる食物の取引を眺めている。両手を丸めた背中・・・ 宮本百合子 「この夏」
・・・続いてシェストフの不安の文学を通じてもたらされたニイチェ、ドストイェフスキー熱はミドルトン・マリがその混成物であるというジイドの芸術をも益々日本の読者層に輸入した。又ジイドがフェルナンデスの限界を破って、更に新しい社会の建設に対する賛同者に・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・そのために新しい社会は、無差別にインテリゲンツィアと革命的労働者との階級的混成指導部によって建設され得るのではないかという混乱した見解をもった。レーニンと意見が一致しかねたのはこの点であった。ゴーリキイは過去において、まだ労働階級の自覚が乏・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
出典:青空文庫