・・・ われわれの生きている今は、どういう時代であろうか? 満蒙事件をきっかけとして、ブルジョア文化は、実に急激に、露骨に反動化しつつある。未組織の文学愛好者、特に婦人の間に多くの読者をもっている三上於菟吉、直木三十五などというブルジョア・・・ 宮本百合子 「国際無産婦人デーに際して」
・・・が、八月十五日から数日たってやっと降伏した知らせが届いた満蒙奥地の開拓移民団の正直な老若男女が、ことの意外におどろいて数百名の生死を賭す団の進退をうちあわせようと駆けつけたときには、もうどこにも関東軍の影はなかった。そのために、うちすてられ・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
・・・ 工場閉鎖、賃銀不払、労働強化、三百万の失業と農業恐慌――資本家地主は遂に満蒙で帝国対! ファシズム絶対反対! ソヴェト同盟を守れと叫ぶ日だ。現実、戦争に夫や兄弟を奪われ、物価騰貴と失業に苦しめられているわれわれが手をつかねてはいられぬ・・・ 宮本百合子 「婦人と文学の話」
・・・こういう神秘主義を様々の形にかえてコケおどしの慰霊祭のおかげで、支配者たちは自分の利益のために殺した満蒙出征戦死兵の窮迫した遺族からの反抗をふせいでいるのだ。軍国主義をあふり得るのだ。 イギリスのロッジ博士が戦死した息子からの霊界消息を・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・ 帝国主義日本はすでに満蒙を侵略し、ソヴェト同盟攻撃をもって口火を切るべき第二次世界戦争を実に着々と準備している。来るべき第二次世界戦争と十八年前の第一次世界戦争との違うところは、今度世界戦争が始ればそれは世界の帝国主義と世界のプロレタ・・・ 宮本百合子 「ますます確りやりましょう」
・・・大きい字で「満蒙展覧会」という広告も出ている。 時間があったので一寸入って見る気になりました。 白木屋の玄関に立っている案内がきをよむと、展覧会の会場はいくつもあり、近日中にえらい陸軍の軍人が来て景物に講演をやったり、軍用犬の実演を・・・ 宮本百合子 「「モダン猿蟹合戦」」
出典:青空文庫