・・・また炭は溶液の中にある有機性の色素を吸収する性質がある、殊に獣炭あるいは骨炭がこれに適しているので砂糖の色を抜く事などに使われる。コークスは石炭を蒸焼にした炭だ、火力が強いが燃えつきにくい。近来電気の応用が盛んになるにつれて色々の事に炭を使・・・ 寺田寅彦 「歳時記新註」
・・・それで本のほうは断念して、園芸好きのR研究所の門衛U君に教わって理研製殺虫剤ネオトンのやや濃度の大きい溶液で目的を達せられることを知った。園芸書の著者になってみると、何々会社製の何剤がいいなどと明白に書くのは何かいけないさしつかえがあると見・・・ 寺田寅彦 「錯覚数題」
・・・ 例えばまた過飽和の状態にある溶液より結晶が析出する場合のごとき、これがいつ結晶を始め、また結晶の心核が如何に分布さるべきかを精密に予報せんとする時、単に温度従って過飽和度を知るのみにては的中の見込は極めて小なるべし。ただ吾人は過飽和度・・・ 寺田寅彦 「自然現象の予報」
・・・ 皮の下に、肉の下に、繋ぎ合わされた骨と骨とを貫いて絶えず満ちて居る髄溶液を自覚して居るものが何処に在るだろうか。自然は生育の過程の何時の間にか、堅い折れ易い骨の裡に、流動する液体を与えた。 誰が与えられた時を知り、その動揺を知覚し・・・ 宮本百合子 「無題」
出典:青空文庫