・・・わたしたちは、本当にもう戦争はいやだし、人間らしくない怒号で狩りたてられることはいやだし、なんぞというとすぐ激昂する、あらあらしさはうんざりです。しかし、日本の現実には安定をもとめている多くの人々の感情をおだやかにうけとめることのできるよう・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・と激昂した前書で、はる子には思いがけない内容であった。圭子を憎悪して罵った手紙であった。はる子の圭子に対する友情を尊んで家へはもう来ない。最近自分には×、×などというよい友達が出来たから心配はいらぬと云う結びであった。猶々云い足りぬらし・・・ 宮本百合子 「沈丁花」
・・・美くしい月光の揺曳のうちにも、光輝燦然たる太陽のうち、または木や草や、一本の苔にまでも宿っている彼女の守霊は、あらゆる時と場所との規則を超脱して、泣いて行く彼女を愛撫し、激昂に震える彼女を静かに、なだめるのである。 心が暗く、陰気に沈む・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
・・・ あの時の、自分の激昂した心情は、そのままで彼女に対し、或は公平でないものであったかも知れない。 然し。―― ちょうど、私共が五年の時であった。或る春の心持の晴々とする朝、始業の鐘が鳴り、我々は、二階の教室に行こうとしていた。・・・ 宮本百合子 「追想」
・・・二人の大作家が十五年間も意志の疏通を欠いたばかりか、或る時は本気で決闘までしかねまじい程激昂したには種々の原因があったに違いない。が、対立の原因となる多くの見解の相違中のただ一つ、恋愛や婦人に対する二人の考えかたの違いだけを見ても、私は十分・・・ 宮本百合子 「ツルゲーネフの生きかた」
出典:青空文庫