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・・・「灰汁桶のしずくやみけりきりぎりす」「あぶらかすりて宵寝する秋」という一連がある。これに関する評釈はおそらく今までに言い尽くされ書き尽くされているであろうと思う。しかし心理学的連想の実例を捜している一学究としてあらゆる芸術的の立場を離れ・・・
寺田寅彦
「連句雑俎」
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・・・空は灰汁桶を掻き交ぜたような色をして低く塔の上に垂れ懸っている。壁土を溶し込んだように見ゆるテームスの流れは波も立てず音もせず無理矢理に動いているかと思わるる。帆懸舟が一隻塔の下を行く。風なき河に帆をあやつるのだから不規則な三角形の白き翼が・・・
夏目漱石
「倫敦塔」