・・・それでたとえば軽い意味の助演者としてのスパークスなどという役者でも決してただのむだな点景人物ではなくて、言わば個性シンフォニーの中の重要な一楽器としての役目を充分に果たしているようである。これに反してヤニングスの場合は彼の「独唱」にただ若干・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
・・・などはイディルレの好点景であり、「物うりの尻声高く名乗りすて」は喜劇中のモーメントである。少なくも本邦のトーキー脚色者には試みに芭蕉蕪村らの研究をすすめたいと思う。 未来の映画のテクニックはどう進歩するか。次に来るものは立体映画であろう・・・ 寺田寅彦 「映画時代」
・・・夏目先生にその話をしたら早速その当時書いていた小説の中の点景材料に使われた。須永というあまり香ばしからぬ役割の作中人物の所業としてそれが後世に伝わることになってしまった。そのせいではないが往来で葉巻を買って吸付けることはその時限りでやめてし・・・ 寺田寅彦 「喫煙四十年」
・・・近い屋根屋根の波の面白さ、それから段々と低くなって並木通へ視線が導かれ、そこに在る点景の白い婦人の姿を中心として一層ひろい海面へのびてゆくリズムは実に変化と諧調に富んでいて、眺めていると複雑にとらえられている角度や線の交錯から、その海辺に都・・・ 宮本百合子 「ヴォルフの世界」
・・・そのものを主役として前面へ押し出され「従来主人公だった人間が却って添景にまで後退するという行き方の小説も試みられてもいいように思う。歴史小説に於てより高い観点が要求されるとき制約のなかで最も留意すべきものはこの時間的及び空間的なものではある・・・ 宮本百合子 「今日の文学の諸相」
・・・普通の東京住いの市民などは見たことないような桜花爛漫の美を眺めたが、点景人物として映されている日本の女はどれも皆特別仕立ての日本髷と、特別仕立てに誇張された歩きぶりとである。花の中なる花の姿で全篇が終っている。私は身なりよい人々の間にはさま・・・ 宮本百合子 「日本の秋色」
出典:青空文庫