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・・・子供の胸から下をめった打ちに打っては地面に落ちた。子供の上前にも地面にも白い液体が流れ拡がった。 こうなると彼の心持ちはまた変わっていた。子供の無援な立場を憐んでやる心もいつの間にか消え失せて、牛乳瓶ががらりがらりととめどなく滝のように・・・
有島武郎
「卑怯者」
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・・・もに燦く富の力はそれらの青年たちのまるで身近くまでちかづいて、クライドのようにそのなかに入ったように見えるところまで来て、さていざとなると、富める者は自分たちの気まぐれな触手をさっと引っこめて、貧しい無援な青年の生涯は悲しく浪費されてゆくこ・・・
宮本百合子
「文学の大陸的性格について」