・・・て立っている自分、この自分がいるばかりにようよう哀れな亭主も子供達も生きていられるのだという自信に、少なからず誇りを感じていた彼女は、何の価値も全然認め得ない彼が、一存で礼を突返して来たということ――無能力者の僭越――によって、非常に自分の・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
・・・それほど一人の人間として、男として無能力者が日本の絶対者としての天皇だったということは、日本中に強烈な印象を与えています。世界がもし、日本の天皇を本当の元首とよぶにふさわしい人格をもった大人であると認めたなら、法律上の責任はともかく、人道上・・・ 宮本百合子 「ファシズムは生きている」
・・・しかし女なんて不思議なものだ、民法で妻は無能力者になっている、女は結婚すると無能力者になってしまう。一家を賄っているのに、自分で家を建てることも、借金もできない。しかし刑法では女は十分能力あるものとしている。そうして子供を電車で潰されたとい・・・ 宮本百合子 「婦人の創造力」
・・・が、あれはつまり、天皇というものは法律の上でも無能力なものであるということを自分から承認したことであり、どうぞこれからも悪しからずという挨拶です。天皇という地位にうまれた一個の人を無人格な者にするのならば、天皇制なんかはこの点からもない方が・・・ 宮本百合子 「平和運動と文学者」
民法が改正されて、妻の人格がみとめられるようになった。 ふるい民法では、婦人が結婚して妻となると、無能力者になり、経済上の権利、親権その他で無能力とされていた。新しい民法は、婦人の権利の抹殺をとりけしたものであり、財産・・・ 宮本百合子 「民法と道義上の責任」
・・・第二巻法律篇は、婚姻法概論からはじまって、妻の無能力。内縁。国際婚姻法。最後に民法改正要綱解説として、穂積重遠博士が序言及び婚姻を執筆していられる。この民法改正要綱は昭和二年政府が臨時法制審議会を設けて、我々に日常関係ある民法のうち、親族、・・・ 宮本百合子 「若い婦人のための書棚」
・・・例えば第十四条から第十九条に至る妻の無能力ということに関する条項、第八百一条から第八百四条に至る財産に対する妻の無権利、第八百十三条の離婚についての不平等な規定、第八百八十六条から第八百八十七条に至る親権において母の権利の制限されていること・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫