・・・あまり、煩さい無駄口はききますまい。ヴァレリイが俗っぽくみえるのはあなたの『逆行』『ダス・ゲマイネ』読後感でした。然し、ここには近代青年の『失われたる青春に関する一片の抒情、吾々の実在環境の亡霊に関する、自己証明』があります。然し、ぼくは薄・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・さる無駄口に暇潰さんより手取疾く清元と常磐津とを語り較べて聞かすが可し。其人聾にあらざるよりは、手を拍ってナルといわんは必定。是れ必竟するに清元常磐津直接に聞手の感情の下に働き、其人の感動を喚起し、斯くて人の扶助を待たずして自ら能く説明すれ・・・ 二葉亭四迷 「小説総論」
・・・ こういう無駄口はきくが、インガが第三交代の婦人労働者達に約束した托児所増設のための図面は、場所がないと云って、提出しない。「私、今日出して下さるように願っておきましたよ。」「御存じでしょうが……」「どうして? こしらえなか・・・ 宮本百合子 「「インガ」」
・・・ そのとき猟人の胸に満ちる、緊張した原始的な嬉しさが、そのまま今年寄りに活気を与えて、何だか絶えずそわそわしている彼女は、きっとこういうときほか出ないものになっている無駄口をきいたり、下らないことに大笑いをして、「ヘッ、馬鹿野郎が!・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
・・・「無駄口しゃべるな。悪魔の水車め!」 だが「結構さん」は、ゴーリキイの話を注意深く聞くばかりでなく、微笑しながら、しばしば彼に云った。「ふむ、そりゃ兄弟、そうじゃないよ、そりゃお前が自分で思いついたのさ。」或は、二つの優しい打撃で「・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・「無駄口しゃべるな。悪魔の水車め!」 だが「結構さん」は、ゴーリキイの話を注意深く聞いてくれるばかりでなく、微笑しながら、しばしば彼に云った。「ふむ、そりゃ兄弟、そうじゃないよ、そりゃお前が自分で思いついたのさ。」或は、二つの優しい・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
出典:青空文庫