・・・これは、比較的外面の事実であるが、なほ、焦眉の応策を要するものに、思想問題がありました。一歩内面的なる、思想、人格、教化の如きに至っては、いかに強権の力でも、容易に左右することはできないのであります。 思うに、このことは、たゞ児童等・・・ 小川未明 「近頃感じたこと」
・・・それで全国民は函館罹災民の焦眉の急を救うために応分の力を添えることを忘れないと同時に各自自身が同じ災禍にかからぬように覚悟をきめることがいっそう大切であろう。そうしてこのような災害を避けるためのあらゆる方法施設は火事というものの科学的研究に・・・ 寺田寅彦 「函館の大火について」
・・・保修工事が焦眉の問題であった。私は苦心して手頃な石ころを一杯拾って来た。傘は夙に放ぽり出し、土の流れを防ごうとして、一本一本根の囲りをこの小石で取繞んだ。が、瞬く間に情なしの広い空地の水は石をも越した。石ころも、根も水づかりだ。葉は益々悲し・・・ 宮本百合子 「雨と子供」
・・・の人民的保管の必要は焦眉の急である。美術的国宝を社寺とひきはなすことも緊急である。〔一九四九年三月〕 宮本百合子 「国宝」
出典:青空文庫