・・・「戦争の災禍が骨身に徹しており、かつ個人の精神的物質的幸福を無視することが、どのような結果をもたらすかを十分経験した日本人は、これらの熱望に共感するであろう」と。わたしたちはこの言葉を、生活の実際について理解し、平和について語り、平和のため・・・ 宮本百合子 「世界は求めている、平和を!」
・・・それらがとりあげられず、その悲傷において、その克服への熱望においてそのものとして肯定を強要して存在するのでしょうか。 久しい間沈黙していた豊島与志雄がこのごろ「塩花」などをはじめ、若い女性を主人公とするいくつもの作品を発表しています。初・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・ マヤコフスキーが、ソヴェトを愛し、その発達を熱望し、それを自分の戯曲の中で目の前に見るように描きたがった心持。彼の所謂、「よく丈夫に組立てられたフォードの美」をその演出で把握しようとしたメイエルホリドの意志。どっちも理解出来る。二人は・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・というのは、空を翔びたいと熱望した少年イカルスが、大鳥の翼を体につけて地上より飛び立ち、高く高くと舞い上って行ったけれども、あんまり天に近いところまで行ったら、ジュピターが人間の少年イカルスの剛胆さに腹をたてて、イカルスの背中に翼をくっつけ・・・ 宮本百合子 「なぜ、それはそうであったか」
・・・この年に書いた小説はどれも、作者のその基本的な熱望の上にたっていた。しかし表現はむずかしくてどの作品もかろうじて全篇を流れる気分として戦争に対する反対を表し得たばかりであった。文芸評論でいわゆる日本的なものの本質の究明とエセヒューマニズムと・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・再び職業に戻りたい熱望は堪えがたいものです。ロザリーは、種々に苦しみました。 良人は、家庭の為にと云って、それを賛成しない。彼は義務を云々します。彼女は、こう云う場合自分が男であったなら、何の面倒なことがあろうと思わずにはいられません。・・・ 宮本百合子 「「母の膝の上に」(紹介並短評)」
・・・ 私共は、真個によりよい事実の上に生きることを熱望致します。〔一九二一年八月〕 宮本百合子 「ひしがれた女性と語る」
・・・ 生きることを心から愛する私たち日本の婦人、努力を惜しまず、平和と幸福との社会的な保証を熱望する私たち日本婦人は、率直にそれらの真情を吐露しながら、世界の歩みと倶に自分たちの実力を高め、希望を実現してゆく方法を学び、その忍耐づよさに最後・・・ 宮本百合子 「婦人民主クラブ趣意書」
・・・従って作品の主題は人道主義的正義観、人間解放への熱望などで特色づけられているのだ。ドストイェフスキーの作品の悲劇的な分裂の世界は、ロシアの苦悩が正当なはけぐちとしての人民の革命的方向からはなれた結果の錯乱として、世界的な例を示している。・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・一人の女が、さながら子供なんぞ可愛いと思ってはいけない夜叉のヒューマニズムでも高々とふりかざしているかのように云われる舟橋氏も、主張されるその新胎に立ってしずかに眺められた時、ここに一つの愛し生まんと熱望しつつ歴史の歯車によってその可能を引・・・ 宮本百合子 「夜叉のなげき」
出典:青空文庫