・・・特に昭和三年、三男英男を失ってから、母は以前にもまして自身の情熱を文章として表現したいという熱望を抱くようになったとともに、既にその頃は糖尿病が重り、視力衰弱して読書執筆については全く不如意な健康状態におかれていたのであった。それにもかかわ・・・ 宮本百合子 「葭の影にそえて」
・・・ ボリシェヴィキは火花のような言葉でそれをあばき大衆の熱望をとらえている。 戦艦オーロラーが、冬宮を砲撃した時の写真、軍事革命委員会の本部があった、スモーリヌイの大きな写真を見ると、われ知らず、喜びの叫びが口をついてあふれる・・・ 宮本百合子 「ロシアの過去を物語る革命博物館を観る」
・・・それが人間としての醜さとして社会生活の判断に適用するような社会、十代のひとたちが、よりよく生きようと熱望する、その熱望が、すべての人々の熱望に通じて行為されるような社会にしてゆくこと。自分自身を偽われず、新しい世代の何ものかであろうと欲する・・・ 宮本百合子 「若い人たちの意志」
・・・ 現代の平和と原子兵器禁止の要求にあらわされている世界人民の熱望の声々は、より高い次元での人民のルネッサンスの声々である。現代の医学では癌の発生する原因がとりのぞかれず、一分ごとに癌患者が出ている。それだからと云って、癌を人間社会から絶・・・ 宮本百合子 「私の信条」
・・・に即こうとする熱望があるのであった。七 先生の諧謔はこの超脱の要求と結びつけて考えねばならぬ。もともと先生の気質には諧謔的な傾向が存在していたかもしれない。しかし先生は諧謔をもってすべてを片づけようとする人ではなかった。諧謔・・・ 和辻哲郎 「夏目先生の追憶」
出典:青空文庫