・・・もし物資的に苦労のある生活で愛の破綻がきたとしたら女はいっそ何によってそれをいやすことができよう。金があれば「愛情に破綻はあれ、まぎらす方法はいくらもある」故に金力ある良人を求める今日のさもしさが肯定されているのである。あそんで、さばけて、・・・ 宮本百合子 「若い婦人の著書二つ」
・・・特に将校階級がトラックを使ってまで、軍の物資を分け取りしたことは輿論を激しく刺戟して、当時陸軍大臣が人民に謝罪をしたほどであった。残額は特殊預金とされたにしろ、戦災保険は五千円支払われた。解職手当、復員手当など、それぞれの家庭としては纏まっ・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・子供にとって幸福というのは、充分な父母の愛と、相当な物資の余裕、健康、稍長じては各自の個性を認めようとする常識を両親が持っていてくれるということです。私は、幸い丈夫で、可愛がられ、今から十年前の一般から見れば自由に育って来ました。従って性格・・・ 宮本百合子 「われを省みる」
出典:青空文庫