・・・そして、彼等の狂騒と私等は、この人生にとって畢竟、いかなる意義を有したであろうか。 たゞ人生の意義は、たゞちに、美と正義に向って突き進む力の中にだけ見出されなければならぬ。そして、それ以外には、恐らく、見出されないものだろう。 秋霜・・・ 小川未明 「名もなき草」
・・・山上通信は、私の狂躁、凡夫尊俗の様などを表現しよう、他にこんたんございません。先生の愛情については、どんなことがあろうたって、疑いません。こんどの中外公論の小説なども、みんな、――」「うん、まあ、――。」「みんな、だまって居られても・・・ 太宰治 「創生記」
・・・軽薄。狂躁。ほんとうの愛情というものは死ぬまで黙っているものだ。菊のやつが僕にそう教えたことがある。君、ビッグ・ニュウス。どうしようもない。菊が君に惚れているぞ。佐野次郎さんには、死んでも言うものか。死ぬほど好きなひとだもの。そんな逆説めい・・・ 太宰治 「ダス・ゲマイネ」
出典:青空文庫