・・・根が、狭量の私は、先刻この少年から受けた侮辱を未だ忘れかねて、やはり意地悪い言いかたをしていた。「さっきの元気は、どうしたんだい。だらしの無い奴だ。男は、泣くものじゃないよ。そら、鼻でもかんで、しゃんとし給え。」私は、やはり池の面を眺めたま・・・ 太宰治 「乞食学生」
・・・野暮な田舎者の狭量かも知れない。私は三田君の、そのような、うぶなお便りを愛する事が出来なかった。それから、しばらくしてまた一通。これも原隊からのお便りである。 拝啓。 ながい間ごぶさた致しました。 御からだいかがですか。 全・・・ 太宰治 「散華」
・・・しかるに狭量神経質の政府は、ひどく気にさえ出して、ことに社会主義者が日露戦争に非戦論を唱うるとにわかに圧迫を強くし、足尾騒動から赤旗事件となって、官権と社会主義者はとうとう犬猿の間となってしまった。諸君、最上の帽子は頭にのっていることを忘る・・・ 徳冨蘆花 「謀叛論(草稿)」
・・・を主として価値を定め、批判しようとするから、勢い、狭量な、自己肯定に堕し易い。 人類の生活は時というものに関する認識が、今日程明白に意識されない時代から初まっていました。時に、時という命名を行ったのは人類です。 太古の祖先等は、出生・・・ 宮本百合子 「われを省みる」
出典:青空文庫