・・・それをちっとも知らないで、ただその見物の群集の背中だけ見物して帰った訳である。生え抜きの上田市民で丁度この日他行のためにこの祇園祭の珍しい行事に逢わなかった人もあるであろうから一生におそらくただ一度この町へ来合わせて丁度偶然この七十年目の行・・・ 寺田寅彦 「高原」
・・・ 第三群は、生え抜きの新しいソヴェト劇団だ。プロレタリアートの第一労働者劇場。МОСПС《エムオーエスペーエス》劇場。「劇場労働青年」劇場。青襯衣座。革命劇場。メイエルホリド座。センペランテ劇場。モスクワに三つあって、プロレタリア児童・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・ ――いかにも物懶さと云い、何処やら地から生え抜き日本離れのした雰囲気と云い、面白いのだが、私共は或虫、その他心配で迚も泊る気にはなれなかった。私は旅館の相談旁々、紹介を得て来た図書館長の永山氏に電話をかけた。私、早口になると見え、電話・・・ 宮本百合子 「長崎の一瞥」
出典:青空文庫