はしがき もの思う葦という題名にて、日本浪曼派の機関雑誌におよそ一箇年ほどつづけて書かせてもらおうと思いたったのには、次のような理由がある。「生きて居ようと思ったから。」私は生業につとめなければいけないではないか。簡単な理由・・・ 太宰治 「もの思う葦」
・・・ ああいうところで、ああいう生活をしている人々には、みんな家があり、故郷があり生業がある。 具体的に今日の村の暮しの有様、都会の暮し向きの有様を書いたものは、きっと大きい慰めとなり、人間的な情緒をうるおすことでしょう。特に戦時ニュー・・・ 宮本百合子 「身ぶりならぬ慰めを」
・・・ 世界は鵜飼の遊楽か、鮎を捕る生業かということよりも、その楽しさと後の寂しさとの沈みゆくところ、自らそれぞれ自分の胸に帰って来るという、得も云われぬ動と静との結婚の祭りを、私はただ合掌するばかりに眺めただけだ。一度、人は心から自分の手の・・・ 横光利一 「鵜飼」
出典:青空文庫