・・・ しかるをいわんや臨兵闘者皆陣列在前といい、令百由旬内無諸哀艱と唱えて、四縦五行の九字を切るにおいては、いかばかり不思議の働をするかも計られまい、と申したということを聞いたのであります。 いや、余事を申上げまして恐入りますが、唯今私・・・ 泉鏡花 「湯女の魂」
・・・(一瞬百由旬を飛んでいるぞ。けれども見ろ、少しも動いていない。少しも動かずに移私は斯うつぶやくように考えました。 天人の衣はけむりのようにうすくその瓔珞は昧爽の天盤からかすかな光を受けました。(ははあ、ここは空気の稀薄が殆んど真・・・ 宮沢賢治 「インドラの網」
・・・捨身菩薩がもとの鳥の形に身をなして、空をお飛びになるときは、一揚というて、一はばたきに、六千由旬を行きなさる。そのいわれより疾翔と申さるる、大力というは、お徳によって、たとえ火の中水の中、ただこの菩薩を念ずるものは、捨身大菩薩、必らず飛び込・・・ 宮沢賢治 「二十六夜」
出典:青空文庫