・・・僕等の間では、今に菊池は町会議員に選挙されはしないかという噂さえある。 今まで話したような事柄から菊池には、菊池の境涯がちゃんと出来上がっているという気がする。そうして、その境涯は、可也僕には羨ましい境涯である。若し、多岐多端の現代に純・・・ 芥川竜之介 「合理的、同時に多量の人間味」
・・・要は、適当なる社会政策の施されざるかぎり、学校か、町会などにて容易に実行されることでなければならぬ。 これについて、富豪の宏大なる邸宅、空地は、市内処々に散在する。彼等の中には、他に幾つも別荘を所有する者もあって、たゞ一つという訳でなく・・・ 小川未明 「児童の解放擁護」
・・・なんて、笑いながら言う町会議員などもある。同級生たちはもうみんな分別くさい顔の親父になって、町会議員やらお百姓さんやら校長先生やらになりすまし、どうやら一財産こしらえた者みたいに落ちつき払っている。しかし、だんだん話合ってみると、私の同級生・・・ 太宰治 「やんぬる哉」
・・・かつ学校の傍にその区内町会所の席を設け、町役人出張の場所となして、町用を弁ずるの傍に生徒の世話をも兼ぬるゆえ、いっそうの便利あるなり。 四所の中学校には、外国人を雇い、英仏日耳曼の語学を教えり。その法は東京・大坂に行わるるものと大同小異・・・ 福沢諭吉 「京都学校の記」
・・・ 町会か或は在郷軍人会の、そういうところの人々がより合って、名誉を記念する方法を講じたとき、こういう情景が生じる場合もあり得ることを思っていただろうか。隣同士というものの生活がそこまで、まざまざと現れることへの想像が働かなかったのではな・・・ 宮本百合子 「今日の耳目」
・・・商人も今日の社会の新しい状態に入り切れずにいるし、買い手の方もそういうところがあって、例えば野菜ものにしろ共同購入を試みた隣組、或は隣組のそういう活動を鼓舞して組織した町会という実例を余り知らない。互いの関係から云えば、主婦たちが迅速に計画・・・ 宮本百合子 「主婦意識の転換」
・・・省線各駅、町会の告知板に、徳川時代の、十手をもった捕りかたが手に手にふりかざした御用提燈が赤い色で描かれたポスターがはられた。赤い御用提燈に毒々しくスパイ御用心と書かれていた。当時の権力者たちは、自分らでまきおこした大惨禍を、国民が反省し、・・・ 宮本百合子 「世界の寡婦」
・・・ 町会議員を息子に持っていると威張ったところで、いざというときにはどうせ、私の敵じゃあないわい。 今の世じゃあ、金さえあればどんな無理も通せるというもの、現に佐渡りの議員だって、買ったも同様の札で当ったのだというじゃあないか。 ・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
・・・役所では、隣組や町会に国民調査をまかした結果として、この次は各自申告をさせる、と云っている。しかし、ただ調査のやりかたの不十分というばかりではないと思える。やはり根本には、総選挙というものが、わたしたち一人一人の生活の打開のために、どれほど・・・ 宮本百合子 「春遠し」
・・・強制貯金をさせるという気はないという意味にとれる答えが、いくつかの答えの中にあったが、その朝、貯蓄組合加入の紙が市役所のビラと一緒に町会からまわって来て、各戸最低五十銭以上の貯蓄をすすめられているものには、では、あれはちがうのかしら、と思わ・・・ 宮本百合子 「待呆け議会風景」
出典:青空文庫