・・・幸いこの画は地震の禍いをも受けずに今なお残っているが、画が画だからマジメに伝統の法則を守った作で、椿岳独自の画境を見る事は出来ない。が、椿岳の画の深い根柢や豪健な筆力を窺う事が出来る大作である。 この本堂の内陣の土蔵の扉にも椿岳の麒麟と・・・ 内田魯庵 「淡島椿岳」
・・・まして、大局ではマイナスの作用をしつつ、目前ともかくプラスである協力者をもたず、或は良人と自身との画境をはっきり弁えて自力の成熟をしようと心がけている若い少数の婦人画家たちは、現在の常識ではどっちを向いても損であり苦しいということになる。・・・ 宮本百合子 「くちなし」
・・・ ラグーザ玉子の画境は、純イタリー風で、やや古典的な確かな技法とともに、こまやかな味、平和な趣の作品が多く、それはこの老婦人画家の心の景物を示すとともに、孝子夫人の求めていられた和らぎにこたえたのであろう。 二度目に上って、すこし時・・・ 宮本百合子 「白藤」
出典:青空文庫